This is a pen.

 This is a pen.

 

 義務教育を終えた日本人が一万人いたとしたら九万九千人は言ったことがあるんじゃないだろうか。私も言った覚えがある。こんなの使わねぇよ!みたいなのがTwitterで稀に流れてくる。

 

 レジ近くで滅茶苦茶英語を喋っている外国人のお客様を眺めながら、私は百均でレジ業務をしていた。一点、二点と数えてお会計をする。今日はぼーっとしすぎてお釣りがないのに「600円のお返しとレシートでございます」と言ってしまった。直後にん? となったがお客様が特に何も言っていなかったのでよしとする。

 

 

 客は最終的にレジに流れてくるもので、英語を喋りながらお客様がやってくる。レジ慣れしていないのか、カゴに入れた品物を一点ずつ場に出していた。まぁ特に困るわけではないので、一点ずつ新しいカゴに移していく。重なっていた商品を横の値下げ済み棚にぎゅむ、と押し込まれたのを横目で見ながら、一点ずつレジに商品を通す。目の前で滅茶苦茶喋っているのに若干怯えながら、だんだん増えてきたレジに並んでいるお客様をチラ見していると

 

「how much is this?」

 

 ヤ、ヤバーーーーい!とうとう話しかけられちゃった!脳内に中学と高校の英語の授業とが走馬灯のようにリフレインする。う、うーん……テスト勉強をサボっていた記憶「This is a pen.は日常生活では使いません!」ってツイートしか出てこない!私の中高の英語の成績は課題と授業態度で何とかのし上げた3または4!

 

 お客様は三つのレターセットが何円かを聞きたいらしい。脳内に勝手に浮上した与謝野晶子を横に置いて、こういうと気なんて答えるのがわかるんだろう……と思案する。しかし英語なんてものに触れずにこの二年間を生きてきたので、必要な単語が急に出てくるわけもない。五秒考えて、後ろにならんでいる四人のレジ待ち客を見て、一つずつ目の前にレターセットを差し出す。

 

「hundred、hundred、hundred……」

 

 ヤケクソか? でも前「単純なものでも通じるよ」ってツイート見た!

 

 実際通じた。外国人のお客様はにっこり笑って「Ok.Ok.」と言ってレターセットを受け取って場に出した。百円なら買いますということだろう(最近の百均は百円でないものが多く、店員が「こちら二百円の商品になります」と言ったら「じゃあいらないです」と言われることも往々にしてある)。

 

 

 忙しすぎてレジヘルプを入れながらも、なんとかその場を乗り切った。別に英語を勉強しようとかそんな気は一ミリも起きなかったが、困ったときは単語連発で何とかなるという知見を得た。でも絶対英語はやった方が良い。そんな日だった。

 

4/25(火曜日)